印中比較で、道路の舗装率や高速道路網がよく取り上げられる。
中国政府の計画的な高速道路網整備、さすが共産党国家、この10余年、先進国並みの立派な3~4車線の高速道路が次々に計画通り建設されている。物凄いとしか言いようがない。全土国有地同様であり、政府の命令で容易に土地が確保できる事、労働力が豊富な事、近代的な建設工法が導入されている事、豊富な予算などが背景にある。国の権威を示すプロジェクトのようだ。
インドの場合、道路整備は遅々として進まない。まず予算捻出が大変である。整備計画は、まず予算を含む国会の承認、地方政府議会の承認、承認後の土地買収、立ち退き対象者の生活保障などが解決されなければならない。工事に関し、近代的工法を導入すれば、技術労働者の雇用は増えるが、夥しい数の肉体・低技能労働者が大量に職を失うことになり、地元の社会問題になりかねない。
一般的なインドの道路舗装工法の実態は、まず、道路脇に一定間隔で採石場からトラックで運ばれてきた大きな岩石が山積みされる。その大きな岩石をハンマーで大中小3種類の大きさに割りそろえる、殆どは女性の仕事である。割りそろえた石を籠に入れる、男性の仕事である。その籠を頭に載せて工事現場に運ぶ、女性が多い。道路を掘るのは機械化されて来たが、掘った道路に大中小の石を順序どおり敷き並べる者。そこに籠に載せた砂を入れる者。アスファルトを撒く者。アスファルトが乾いた跡にローラーをかける者。一般道路舗装は今でも、このような旧態依然とした工法であり、作業は分業制である。ここにもカースト制の影響が大きくある。道路際には日雇い労働者のバラックが立ち並ぶ。近代的工法が導入されれば、彼らの殆どは失業する。彼らの日給は50~60ルピー(150~180円)最低賃金層である。このようにして完成された舗装道路はすぐガタガタ、穴だらけの道になる。数年後には補修工事が必要となる。この繰り返しを失業者対策の一環と揶揄する者もいる。これがインドの実態である。
大都市近辺の道路、国道、高速道路などは、近代的工法を導入するようになってきたが、時間が‘インド感覚’なので、なかなか完成しない。完成してしまえば労働者は失業状態になるし、しかも日給制、わざと工事を遅らせているようだ。つい2年前、インド政府は工事遅延に対し施工主にペナルティーを科するようになった。インド人に‘時は金なり’と言う意識を浸透させることは容易なことではない。
視点を変えてみると違う側面が見える。インドの国土は中国の三分の一、耕地面積は中国の1.17倍、インドは中国より遥かに平地率が高いと言える。インドの総道路距離数は330万km、中国は180万km、インドは人口分散型国家、国中いたるところに大中小の都市があり村落がある。それが雲の巣状に道路でつながっている。率で計算すれば舗装率50%以下と低くなるのは当然である。だが、数字のマジック、インドの55%の道路が舗装されれば、中国の総道路距離より長い距離の道路が舗装される事になる。
これから舗装される予定の道路は莫大な距離である。舗装されていない道路ではあるが、土地買収の必要がない国の資産である。舗装工事は雇用の拡大につながる。新規ゆえに近代工法を導入しても雇用拡大になる事業となる。当然、建設機械の需要拡大にもなろう。其の内、民間高速道路事業者も現れるだろう。インド政府も民間の道路事業を推奨している。
現在、ニューデリー⇔ムンバイ⇔チェンナイ⇔コルカタ⇔ニューデリーの国道網‘黄金の四角形’プロジェクト(全長5,846km・4車線)が工事中である。当初は2005年完成予定だったが、完成は恐らく2008年だろう。さらに‘東西南北回廊’プロジェクト(全長7,300km・4車線)は、年内2007年完成予定だったが、やっと着工されたばかりである。完成はいつになるか、まさにインド・タイムである。其の内に完成するだろうが…。
ともかく、330万kmの道路網=国有地があると言う事は、これから何らかの利点につながる筈である。


by Tom
ガソリン1ガロン3.5ドル…高い…