インド政府の最重要課題は‘教育レベルの向上’にある。経済成長に伴い生活レベルも徐々に向上、多少余裕が出てきた家庭の日用雑貨品(FMCG=Fast Moving Consumer Goods)の購入量が飛躍的に増えており、今後、年間15~20%の勢いで伸び続けると予想されている。代表的なのが甘い菓子類やシャンプー等々、日本の高度成長期と同じである。最近、急速に販売量を増やしている商品の中に‘教育関連資材’‘文房具’がある。
知る人ぞ知るITC(Indian Tobacco Corporation…インド版JTのような企業)、世界でも‘優良企業’と認知され、民間企業としては、インドでは税前利益第3位の大企業である。主な業種はタバコ、ホテル(シェラトン・グループ)、アグリ・ビジネス、加工食品生産販売、アパレル、グリーティング・カード等々…、インドではグリーティング・カードの需要は莫大である。その他、倉庫やロジスティック・ビジネスも展開している。そのITCが教育資材・文房具ビジネスに本格的に取り組むと発表した。
ITCの教育資材・文房具ビジネスの収益は、5年前は約4億円、2009年は約56億円、其れを3~5年で約200億円にする目標を設定した。注力する商品は、ノートブック、コピー器、コピー用紙、筆記用具(各種鉛筆、ボールペン、ゲルペン等々)、鉛筆削り、消しゴム、多種多様の文具入れ、その他、グラフブック、絵画ノートブック、練習ノート、メモ帳、学校の紋章作成…、多種多様である。
販売戦略は、①現在既にポピュラーになりつつあるClassmateとPaperkraftと言うブランドの活用。その為に②クリケットの有名選手と人気のある映画俳優をブランド大使に任命し、大々的に宣伝・キャンペーンを展開する。③現在、ITC傘下に900のディストリビューターと70,000のアウトレット店があるが、2年で倍にする。元々はタバコ専業者、インドの津々浦々の20万軒以上の小売店とのネットワークがある。④多種多様の紙が必要となるので、新たに約1,000億円投資し、ニーズにあった紙を生産する。⑤環境に優しい紙を生産する。⑥CSRとして、ノートブック4冊につき1ルピー(約2円)を村の小学校に寄付する。⑦仲間である、TATA、Wipro, IBM, HSBC, ICICI等々に協力を要請、各グループの事務用品として購入・使用してもらう。⑧最終的は、Schoolbagの販売まで大々的に行う。
この戦略には、インドでビジネスを展開する上で、様々なヒントが隠されている。需要が巨大なノートブックなどは外資の参入が難しい分野である。外資規制もある。価格優先の商品、インドでは粗悪なノートブックが格安で売られている。消しゴムで消そうとすると、すぐ紙が破れてしまう。再生できない最終の紙がノートブック用に使われている。品質を重視する日本の企業では価格的に太刀打ちできない。
日本の文房具は質的にもアイデア面でも世界最先端だろう。コストと品質の問題を解決できればインド市場で大きなビジネス・チャンスが生まれてくる。超廉価文房具と高級文房具の両建てでビジネス展開を考えれば良い。そんなに難しい事ではないだろう。一品の収益ではなく、販売量総体で収益を考えれば良い。販売量の桁が違う。
既にインド進出を考えている日本の文房具メーカーが数社いるが、インド市場、特に文房具のようなFMCG市場は、日本企業が攻め込むには大きな壁がある。特にインド国内販売は、外資単独では非常に難しい。インド人にしか判らない世界もある。むしろITCのような企業の巨大なインド国内販売ネットワークを有効活用して売り込む方が良策だろう。技術を売るのも一策である。
インドの文房具、本当に‘ろくな物’しかない。教材用の道具や玩具も然り。其れがグレード・アップした物にリプレースされて行く。リプレースされる量も莫大である。一方、文房具専門店は、数年前にやっと1軒オープン、今でも数軒程度だろう。インドのFMCGビジネスは狙い目である。


by Tom
ガソリン1ガロン3.5ドル…高い…